スマホがあれば、一人でもすぐにゲームを始められる時代です。オンラインで友人とつながることもでき、対戦相手を探すために同じ場所へ集まる必要もありません。
一方、カードを並べ、コマを動かし、参加者が同じテーブルを囲むボードゲームは今も遊ばれ続けています。準備やルール説明が必要なボードゲームは、多くの場合、デジタルゲームより手間がかかります。それでも、なぜなくならないのでしょうか。
本記事では、オンライン化が進む時代にもボードゲームが残る理由と、今後どのようにデジタルと共存していくのかを考えます。
スマホがあれば遊べる時代に、なぜボードゲームを選ぶのか
スマホゲームには、すぐに始められる手軽さがあります。ゲームの準備や後片付けは必要なく、ルールの処理や得点計算も自動です。離れた場所にいる人と遊んだり、一人で空いた時間を使ったりすることもできます。
それに対して、ボードゲームは箱を開け、カードやコマを準備し、参加者全員がルールを理解してから始めなければなりません。遊ぶための場所や時間も必要です。
効率だけを比べれば、スマホゲームのほうが優れている部分は多いでしょう。しかし、ボードゲームを選ぶ人は、遊びに手軽さや効率だけを求めているわけではありません。
同じ場所に集まり、相手の反応を見ながら遊ぶことや、カードやコマに触れることまで含めて楽しんでいます。ボードゲームの手間は弱点である一方、準備や待ち時間が、会話や笑いを生むこともあります。
ボードゲームは本当に時代遅れになっているのか
スマホや家庭用ゲーム機が広がったからといって、アナログの遊びがすべて縮小しているとは限りません。
ただし、「玩具市場が拡大しているから、ボードゲーム市場も成長している」と単純に判断することもできません。数字を見るときは、全体の規模だけでなく、どの分野が成長を支えているのかまで確認する必要があります。
玩具市場の成長だけではボードゲームの人気を断定できない
2025年度の国内玩具市場は、前年度比106.3%の1兆1,664億円となり、調査開始以来、過去最高を更新しました。少子化が進むなかでも、玩具市場は2019年度以降、6年連続で過去最高を更新しています。
ただし、市場の伸びを強く支えているのは「カードゲーム・トレーディングカード」です。2025年度は3,384億円となり、玩具市場全体の約30%を占めました。
この数字は、一般的なボードゲームだけの市場規模を示すものではありません。そのため、玩具市場が拡大しているという事実だけを根拠に、「ボードゲーム市場も同じように成長している」と結論付けるのは難しいでしょう。
一方で、デジタルゲームが広がるなかでも、カードやコマなどを使うアナログ商品にお金を使う人が一定数いることはわかります。アナログの遊びがデジタルにすべて置き換えられたわけではない、と考える材料にはなりそうです。
オンライン化によってボードゲームとの接点は増えている
オンラインでボードゲームを遊べる「Board Game Arena」では、2025年に6,900万時間以上プレイされました。
リアルタイム形式では7,800万卓以上、時間を分けて進めるターンベース形式では1,750万卓が完了しています。さらに、同年には227タイトルが追加されました。
この結果からは、オンライン化がボードゲームを消滅させるのではなく、遊び方を増やしている様子がうかがえます。
以前は、気になるゲームを試すにも、商品を購入したり、持っている人を探したりする必要がありました。現在はオンライン版を利用し、離れた場所にいる相手と遊んだり、購入前にゲームの雰囲気を確かめたりできます。
物理的なボードゲームとオンライン版は、必ずしも同じ利用場面を奪い合う関係ではありません。オンライン版が実物を知るきっかけになり、実物で遊んだゲームをオンラインで続けることもあります。
参考元:Board Game Arena「2025年の振り返り記事」
デジタルでは置き換えにくいボードゲームの価値
スマホやパソコンでも、ボードゲームと同じルールを再現することはできます。しかし、ルールが同じだからといって、遊んだときの体験まで同じになるとは限りません。
ボードゲームの価値は、同じ場所に集まり、相手の反応を直接感じられることにもあります。
同じテーブルにいる人へ意識を向けられる
スマホを使っていると、ゲーム中でも通知を確認したり、別のアプリを開いたりできます。便利な反面、一緒にいる人と同じ時間を過ごしていても、それぞれの意識が別の画面へ向かいやすくなります。
ボードゲームでは、基本的に参加者全員が同じ盤面を見ます。誰が何をしたのかを確認し、相手の手番や盤面の変化を共有するため、自然と目の前にいる相手へ意識が向きます。
筆者もオンラインゲームで遊びますが、夫婦でボードゲームをするときは、ゲーム以外の会話も増えると感じます。相手の手番を待つ間に話したり、予想外の展開を一緒に笑ったりするからです。
一緒に過ごす時間そのものを楽しめる点は、ボードゲームが残る理由ではないでしょうか。
表情や沈黙もゲームの情報になる
対面のボードゲームでは、プレイヤーの表情や声の変化、カードを出すまでの間もゲームの一部になります。
正体を隠すゲームでは、発言が不自然な人を疑うことがあります。交渉要素のあるゲームでは、同じ提案でも、誰がどのような表情で伝えるかによって印象が変わるでしょう。
ナンジャモンジャのような簡単なゲームでも、相手が付けた名前がおかしくて笑ってしまったり、名前を思い出せず焦っている姿を見て盛り上がったりします。
こうした、その場の反応から生まれる笑いは、画面越しでは再現しにくいものです。
デジタルでも音声通話やビデオ通話はできますが、同じテーブルを囲んだときの空気を完全に再現するのは難しいでしょう。ルールの外側で起きる反応まで楽しめることが、対面で遊ぶ意味になっています。
カードやコマに触れる時間も体験に含まれる
ボードゲームには、カードを混ぜる、タイルを並べる、コマを動かすといった動作があります。
得点計算を間違えたり、準備に時間がかかったりするため、デジタルより非効率です。それでも、手元にカードが増えていく感覚や、盤面が少しずつ完成していく様子には、画面上の数字とは違った楽しさがあります。
箱のデザインやコマの形、カードの手触りに魅力を感じて購入する人もいます。遊んでいないときにも棚へ並べ、所有すること自体を楽しめる点は、デジタルデータとして遊ぶゲームとの違いです。
もちろん、大きな箱は収納場所を取り、細かな部品は管理にも手間がかかります。しかし、形のある道具を使うからこそ、遊んだ日の記憶と結び付きやすい面もあります。
ボードゲームにも無視できない弱点がある
ボードゲームには多くの魅力がある一方で、いくつかの不便な点もあります
まず、複数人用のゲームは、人数がそろわなければ遊べません。人数が足りなければ始められず、全員の予定を合わせるだけで時間がかかります。
ルール説明も大きな壁です。筆者自身、ルールが複雑でプレイ時間の長い、いわゆる「重いゲーム」のルールを一度で理解するのが得意ではなく、最初の説明を夫に任せることがあります。説明を聞く時間が長いと、遊び始める前に疲れてしまうこともあります。
さらに、購入費用や収納場所、準備と片付けの負担も無視できません。買ったものの遊ぶ機会がなく、棚に置いたままになるゲームも出てくるでしょう。
スマホゲームなら、人数が集まらなくても遊べます。ルール処理は自動で、収納場所も取りません。
ボードゲームが今後も選ばれるためには、こうした負担を減らすうえで、オンライン版や解説動画が役立ちます。
ボードゲームはデジタルと競争するより共存していく
今後のボードゲームは、デジタルを遠ざけるのではなく、活用しながら残っていくと考えます。
オンライン版なら、離れた相手と遊べます。処理が複雑なゲームでも、得点計算やカード管理を自動化できるため、ルールを覚える負担を減らせます。
動画やオンラインチュートリアルを使えば、説明書を読むだけでは理解しにくいゲームも始めやすくなるでしょう。実物を購入する前にオンラインで試し、自分に合っているか確かめる方法もあります。
一方、オンラインで気に入ったゲームを、家族や友人が集まった日に実物で遊ぶことも可能です。普段はオンライン、集まった日は対面という使い分けもできます。
デジタル化は、物理的なボードゲームの代用品だけではありません。新しいゲームを知り、ルールを学び、一緒に遊ぶ人を見つけるための入口になります。
ボードゲームは、スマホゲームと便利さを競う必要はありません。デジタルの便利さを借りながら、同じ場所で遊ぶ価値をより明確にしていくことだと考えます。
これから残るのは「人と遊ぶ理由」があるゲーム
新作が増え続けるなかでは、すべてのボードゲームが長く残るわけではありません。
見た目の豪華さや新しさだけでは、長く遊ばれ続けるとは限りません。反対に、ルールを覚えやすく、遊ぶ相手によって毎回違う展開が生まれるゲームは、時間がたっても選ばれやすいでしょう。
オンラインでは効率よく遊べるからこそ、物理版には「わざわざ集まって遊びたい」と思える理由が求められます。
会話が生まれる、相手の意外な一面が見える、同じ出来事を一緒に笑える。こうした体験は、映像の美しさや処理速度では測れません。
今後は、オンラインで遊びやすいゲームと、対面だからこそ面白いゲームの違いが、これまで以上にはっきりするかもしれません。
そのなかで物理版は、単にルールを再現する商品ではなく、人が集まるきっかけとして価値を持ち続けるでしょう。
まとめ|不便さがあるからこそボードゲームはなくならない
スマホゲームには、いつでも始められ、離れた相手ともつながれる便利さがあります。ボードゲームが手軽さだけで比べれば、デジタルに分があります。
それでもボードゲームがなくならないのは、遊びの目的が効率だけではないからです。同じテーブルを囲み、相手の表情を見て、カードやコマに触れながら過ごす時間には、対面ならではの価値があります。
もちろん、人数集めやルール説明、収納といった弱点も残ります。今後はオンライン版や動画による説明など、デジタルの力を借りて負担を減らすことが重要です。
ボードゲームはスマホゲームの反対側にある遊びではありません。オンラインと物理版を使い分けながら、人と同じ時間を楽しむ遊びとして生き残っていくのではないでしょうか。